21世紀のサイノツノブログ

サイノツノによる提言

国民皆保険のすばらしさ 『沈みゆく大国アメリカ <逃げ切れ!日本の医療>』

ついに国会でTPP関連法案が承認にかけられる。

いま、TPPが発効したあとの日本がはどうなるのかを知る必要があると思う。

アメリカはTPP加盟後の日本の姿なので、アメリカの状況を見てこれからに備えよう。

 

堤未果は本物のジャーナリストだ。

数々の取材を行い、データを注意深く読み取って、調査する。『貧困大国アメリカ』から引き続いて、彼女が日本国民に与える情報は貴重である。

 

本書も、オバマケアの問題を明らかにしている。

オバマケアは患者にとっては病院の選択肢を狭め、ケア加入者の保険料は安くなるどころか、2倍になった。しかも、病院側には7割しか還付されない上に、煩雑なデータ入力作業が増え、医師はより激務になった。ゆえに、メリットがない病院もオバマケア加入者の処置を拒む、という状況が発生しているという。

オバマケアに加入したことによって、逆に患者は医療にアクセスしにくくなり、結局保険料のみを負担する。これは、事実上の増税措置であるという。

 

また、オバマケア加入者を増やすために、市民団体が動員されたという。市民団体のあるメンバーは、医療保険の仕組みも理解していない上に、オバマケアに入ったものの結局免責額が高額なので無保険者に戻った者であったという(無保険者には罰金が科せられるが、そちらのほうが結局安いのだという)。しかし、高額な報酬がでること、5時間の講習で「ナビゲーター」になれるということから、オバマケアを売ることにしたという。

訪れる住民たちは、医療保険のしくみはわかっていないが、オバマケアのおかげで補助金が出て自分も保険に加入できるという期待に満ちていたという。

そんな住民の期待をみていると、このナビゲーターは「自分のしていることは民間医療のいんちきブローカーと一緒」だと思ったという。

著者は、この構図は社会的弱者に別の弱者を襲わせるというシステム、イラク戦争時の米軍リクルーターの手法と同じだ、と指摘している(米軍リクルーターについては、同じく堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)』で扱われている)。 

 

また、日本の医療がいかにアメリカの保険会社や医療複合体にとって魅力的な市場であるか、中曽根首相の時代以降アメリカの意向によって日本の医療が徐々に切り崩されてきたことが暴かれている。

日本の皆保険とはその歴史的成り立ちから、社会保障の一形態である、と著者はみている。憲法25条「生存権」が背後にあっての皆保険なのである。アメリカの「保険」とは同じ保険という名前でも全くその性質が異なる。

周知のように、アメリカには皆保険制度が存在しない。また、日本のような「高額療養費制度」(収入に応じて毎月の負担額の上限が決まっていて、差額があとから払い戻される)もないから、盲腸手術に200万円かかったりするそうだ。高額な医療費ゆえに医療破産が頻発する。お金持ちかどうかで、死に方が決まる。

このようなことを知ると、日本の国民皆保険は素晴らしい制度だと思われる。お金があるなしに関わらず、堂々と医療を利用することができる。まさに生存権の保障。

 

お金持ちかどうかで死に方が決まる国に、日本はなってほしくない。むしろ国民皆保険制度は世界中の国に導入されればいいのに。

 

ところが、日本における社会保障とも言える国民皆保険は、TPPによって破壊されるおそれがある。

TPPについての日本の報道においては農業についてばかりが報じられているが、TPPとは貿易協定ではない。貿易のみならず、あらゆる分野において、加盟国の参入を認めるものである。
 
ちなみに、TPPの文書はなんと1500ページもある膨大なものであるという。一般的な国際協定は2、3ページである。TPPというのは、条約というよりも、アメリカ式の企業間の「契約書」のようなものなのであると捉えるべきであろう。そこには、アメリカの企業弁護士の姿が見える。このあたりのことは、苫米地英人著『TPPに隠された本当の恐怖: ついに明らかになった危険すぎるシナリオ』がくわしい。
 

今回取り上げている医療は、TPPが発効したのち、確実に米国企業および超巨大多国籍企業の影響を受ける。これが、アメリカの姿は未来の日本の姿だと言える理由だ。

 

私たちができることはなんだろうか。

筆者は、以下のようなアドバイスを贈っている。

無知であること、無関心であることが政府や保険会社につけ入る隙を与える。医療保険の仕組みを知らないがゆえに喜んでオバマケアに加入してしまう人がいたように。自分の国の医療制度をよく知りましょう。

 

正確なデータを得ましょう。たとえば、何かを他国と比較するときのデータは同じ条件で抽出されているかどうか。本書で指摘されていることだが、厚労省が出した日本の医師数のデータは産休中の医師や超高齢の医師も含まれている。それに対し、アメリカとヨーロッパの医師数のデータには、実際に現役で働いてる医師数しか含まれていない。

数え方の違うデータを並べても、正当な比較はできない。 

 

正確なデータを得るには、テレビを見ないことだと私は考える。

「World Values Survey Wave 6:2010-2014」をもとに著者が作成したデータによれば(元のHPにアクセスしてみたが、使用者と使用目的を明らかにした上でダウンロードする方式であった)、日本人においてテレビニュースを情報源にする人が93.6%もいるという。 

 テレビ局は言うまでもなく広告収入によって成り立っている。つまり、広告主に不利な情報は流さない上に、有利になる情報を流すのである。

また、これはテレビの性質だが、視覚、聴覚などに訴えかける力が強いので、観る者の臨場感を高める。臨場感が高い世界を脳は現実と認識する。つまり、テレビの情報を疑っていても観ている以上は、その影響を避けることはできない。テレビとは、誘導、否、洗脳にもってこいの装置なのだ。

 

テレビから情報を得る人が9割を超える日本においては、テレビをのっとることによって世論の操作が可能なのである。そして、実際、いま日本のテレビ局は外資にのっとられているのである。以下の情報を見れば明らかである。

証券保管振替機構 -ほふり- / 外国人保有制限銘柄 期中公表

外資の持ち株比率は、フジ29.27%、日テレ21.43%、TBS14.06%、テレ朝13.68%である。このうち、フジと日テレは電波法第5条に違反している状態なのである(議決権の5分の1以上を外国人が占めてはならない)。

また、先ほどの『TPPに隠された本当の恐怖: ついに明らかになった危険すぎるシナリオ』によれば、2015年10月6日付のデータでは、フジは外資が2,3位、TBSは1,2位が外資であるという。これは外国人資本家が放送内容に圧力をかけることができる数字であるという。

どうしてもテレビをみるなら上記のことは必ず知っておくべきだろう。そして、なるべくテレビ以外の情報にもアクセスするべきだ。私が上記で試みているように、元をたどってみることが必要だろう。

 

日本は民主主義国家である。国民は、投票によって未来の日本をつくることができる。学び、考えよう。誰かに操られるのではなく、自分をよりどころとして生きよう。

 

沈みゆく大国アメリカ (集英社新書)

沈みゆく大国アメリカ (集英社新書)