21世紀のサイノツノブログ

サイノツノによる提言

それぞれの「真理」とは 『宗教学大図鑑』(三省堂)

三省堂の「大図鑑シリーズ」をご存じだろうか。

経営学大図鑑、心理学大図鑑、政治学大図鑑、哲学大図鑑など様々刊行されている。そのどれもが、膨大な情報量と豊富なカラーイラストでもってまとめられており、まさに大図鑑と呼ぶにふさわしいシリーズなのである。

 

そんな魅力的な大図鑑シリーズの「宗教学」がついに刊行された。といっても多分刊行されてから3か月くらい経っている気がするが。ワクワクしながら予約して、やっと手にいれて以来、日々の空き時間にパラパラと読んでいる。

項目が細かく分かれているので、通読するというよりも(物理的にも重いし大きい)、パソコンが立ち上がるまでの間や、お湯が沸く間とか隙間の時間に読むのにちょうどいい。

 

内容は、シャーマニズムや原始的な信仰、古代の信仰、キリスト教から中国の新興宗教まで幅広い。宗派についての項目もある。割合としては、ユダヤ教キリスト教、仏教、イスラム教ヒンドゥー教、道教などの比較的メジャーで信者数が多い宗教にページがさかれていて、世界宗教以前と新興宗教についてはそれぞれのページは少ないが、多くの種類を取り上げている、といった感じである。

 

日本に関係する宗教ということでいえば、アイヌアニミズム、仏教の中の禅、神道天理教が取り上げられている。

 

おもしろかった項目をいくつか紹介しよう。

まず、太平洋諸島の島民に信仰されていた「カーゴ・カルト」。

西洋との貿易や植民地化にともなってうまれた信仰で、信者は、西洋の商人が運ぶ「積み荷」は先祖の霊からの贈り物で、それはこれまで白人に奪われていたのだと考えていたという。彼らは儀礼によって先祖や神々をなだめることによって、積み荷が自分たちに返還され、西洋人が島から追い出される「黄金時代」がくると信じていたという。

第二次世界大戦下、アメリカ軍と日本軍がこれらの島を基地とするようになって信仰者が増加したそうだが、西洋文化の影響が強まった現在では一部の信仰を残すのみであるという。

 

次に、「ユニテリアン・ユニヴァーサリスト協会」を紹介しよう。

この協会は、1961年に成立した。全体としてキリスト教の伝統を汲んでいるものの、その目標は「信条、教義を否定せず、個人の信仰の自由を認める宗教」である。基本的な発想としては、人生において霊的・宗教的側面は必要なもので、あらゆる宗教から学ぶことができると信じている。個人的な経験、良心、理性が信仰の土台となっており、あらゆる人間の意見・信条が尊重されるとしているので、会員は不可知論者、無神論者もいるという。

ちなみに、本項目のタイトルは「私にとって真実であることが真理である」となっている。この言葉は、現代に生きる私たちが「宗教」のあり方を考えるときに役に立つ言葉だろう。

  

というのも、本書を読むと、人間ははるか昔から様々なものに意味を見出して信仰してきたことがわかる。そしてその信仰は地域や環境によって様々な形態をとってきた。例えば、日本に生きる私は、自爆テロをする気持ちはわからない(自爆テロが良いかどうかは別の話だが)。しかし、自爆する人にとっては少なくとも死をいとわないくらい、その信仰は「真理」なのである。

 本書は様々な人の様々な「真理」を垣間見ることができる。

宗教好きにはもちろんおすすめだが、現代人として各宗教の基礎知識を得るのにもってこいの本である。重くてスペースをとるのが難点だけれど、そこは大図鑑なのであしからず。

 

宗教学大図鑑

宗教学大図鑑