読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

21世紀のサイノツノブログ

サイノツノによる提言

地道に探るということ 『進化とは何か ドーキンス博士の特別講義』(早川書房)

書評

 本書は、ドーキンスが行った「クリスマス・レクチャー」の全5回の講演を文章化したものである。「クリスマス・レクチャー」は子供のためにはじめられたということもあって、私のような生物学初心者にも読みやすい本になっている。

 

  まず、本書のタイトルになっている「進化とは何か」という問いに対するドーキンスの答えをおさえておこう。進化とは、「幸運をつみかさねる」というやり方を長大な時間軸上にひきのばすことによって確率が低いことを可能にすることであるという。そしてその進化は人間に向かって収斂しているように見えるが、何万何百万という方向に向かって今も続いている。

 

 進化は、たとえれば鍵が半分開いてお金がこぼれ落ちてきたので、次の世代にその情報が遺伝によって伝えられ、そして次の世代はのこりの鍵の手がかりを探っていくというようなものだという。木の枝そっくりに進化したナナフシも、半分だけ木の枝のような見た目の時期を経て、今に至っているというわけだ。

 しかし、鍵というのは本来開くか開かないかしかない。その開くか開かないかを決めるのがいわゆる「自然選択」なのである。

 

 フクロオオカミと犬は発生が全く違うのに(フクロオオカミはカンガルーなどの有袋類に近い)、同じような見た目である。このように、同じ目的を持つと似たような見た目になることを収斂進化という。ハヤブサとカモは、相手が素晴らしい飛行をするため、自らも素晴らしい飛行をするようになった。ドーキンスはこのような進化を「自促型共進化」と名付けている。

 

 実は、人間の脳も「自促型共進化」なのだ、とドーキンスは言う。ここでの相手は、ソフトウェア(脳)とハードウェア(体)である。想像力、言語、テクノロジーがらせん型爆発を起こしていまのような脳を持っているというのである。つまり、将来おこるかもしれないことを予測することができ、言語によって世代から世代へ伝達が可能であり、道具によって自らの能力を拡大したということである。

 

 最後に、本書におけるドーキンスのメッセージを私なりにまとめておこう。

 聖書においてはすべての生物は人間のために存在するとあるが、決してそんなことはない。どこに生まれたかによって世界や宇宙について信じる内容が異なるということが科学の世界において、あってはならない。成長するということは、一見説明しているように見える超自然的な説明に逃げずに、実際宇宙がどのようになっているかを地道に探ることである。

 

 私たちが歴史とよんでいるものは「人間の歴史」にすぎず、生物という視点からみたらその歴史は本当にささいなものである。本書を読んでそれを心から実感した。しかし、私たちは素晴らしい脳を持っているのだから、ドーキンスが言うように地道に宇宙について思索を深めてゆきたいものである。

 

 

進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義

進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義