21世紀のサイノツノブログ

サイノツノによる提言

自ら考えることの大切さ 『増補 オオカミ少女はいなかった スキャンダラスな心理学』(ちくま文庫)

 本書は、心理学の専門家でなくとも知っているアマラとカマラの話、サブリミナル効果、アルバート坊やの話、文化や民族の差異による錯視の度合いの違いなどのキャッチーな話題を数個とりあげ、それを批判・検討していくというスタイルの本だ。

 

 その批判の方法は、データ解析の方法や資料の正当性などの研究の前提からおかしな点をあぶり出して、学術的にはすでに否定されているがまだ一般には信じられていることを(著者は「神話」と表現している)根本からくつがえす、というものである。ちなみに、この手法はディベートでいえば「データ」「クレーム」「ワラント」のうちの「データ」を裏付ける「ワラント」を覆していることになる。

 

 たとえば、著者はアマラとカマラの存在を裏付けるとされてきた写真の不自然さを指摘する。複数の写真が残っていて、撮影された年もバラバラとされているのだが、どう見ても同じ角度で(違う時に全く同じ角度で写真を撮ることは不可能)、同じ場所で、テーブルのひだまでもが同じなのだという。私も本書に掲載された写真を見たのだが、たしかに違う年に撮影されたものとは思えなかった。女の子の体つきも成長して変化が見られてもよさそうなものだが、それもなかった。

 

 素人の私が見ても不自然なものがどうして長く信じられてきたか。著者によるとそれはハロー効果であるという。これが本書のミソである。著者のように冷静に細かく検討すれば明らかにおかしいとわかることも、権威のある学者が主張したり、数字が多用されることによって私たちは本当のことだと信じてしまう。本書は、どんなに偉い学者が主張していても、思考停止せずに自ら考えることが大事だと気づかせてくれる。

 

 ただ、著者の批判が全て妥当なものであるのかは、いまの私では判断しかねる。本書を手がかりに心理学や認知について学んでいく所存である。

 

 

増補 オオカミ少女はいなかった: スキャンダラスな心理学 (ちくま文庫)

増補 オオカミ少女はいなかった: スキャンダラスな心理学 (ちくま文庫)